澤穂希はいなくても。若手の成長でINAC神戸が皇后杯を2連覇 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 昨シーズンで澤穂希が引退し、INACは正念場を迎えた。実力主義を貫くチームなだけに、何年も同じメンバーで構成されることは難しい。そんな過酷な環境だからこその成長がINACの真髄でもある。その中で武中をはじめ、増矢理花、京川舞、杉田といった20歳前後の選手が活躍できるようになってきたことは、皇后杯2連覇の大きな後押しとなった。

 一方で、今シーズン限りでスパイクを脱ぐ選手もいる。センターバックを務めてきた甲斐潤子だ。INACが常勝軍団として注目される前からのメンバーであり、ポジション柄、決して派手な選手ではなかった。なでしこジャパンとして脚光を浴びることもなかった。

 しかし、堅実な守備で最後尾からチーム支え続けてきた、INACにとってはなくてはならない存在だった。常勝チームと言われながらも勝てなくなった時期もあった。失点を喫する守備陣にも厳しい目が向けられるなか、若手を引き込みながら守備を立て直すために悩み続けていた姿が思い出される。最後のピッチを去る際、「私は"気持ち"しかない選手でしたが、こうして応援してもらえてうれしかった」とサポーターに語ったが、ただの"気持ち"だけでこのチームに存在し続けることは不可能だ。彼女にしか持つことができない"気持ち"を示し続けた8年間。誰もが認める甲斐魂をぜひ受け継いでいってほしい。

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