澤穂希はいなくても。若手の成長でINAC神戸が皇后杯を2連覇 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 互いに譲らず、INACに至っては3試合連続となる延長戦へもつれ込んだ決戦。それでも勝負はつかず、PK戦へ突入した。ここで気を吐いたのがINACの守護神・武中麗依だ。PK勘が冴えてコースの読みが当たり、2本のPKを止めた武中がチームを大会2連覇へ導いた。

 24歳の武中が、こうしてタイトルのかかった試合でスポットライトを浴びるまでの日々は、決して平坦なものではなかった。2011年にINAC入りを果たすも、そこにはなでしこジャパンのゴールを守る海堀あゆみがいた。出場の場を求めて2015年にベガルタ仙台へ移籍を決意、そこではリーグ戦23試合に出場した。

 その後、海堀が引退を発表したことで、急遽INACへ1年で復帰。しかし、今年8月、今度は誰もがその実力を認めるベテランの福元美穂が湯郷ベルから移籍してきたことで、新たな競争の渦にもまれることになった。それでも武仲が苦境を表情に表すことは一切なかった。そして、準決勝で福元が負傷したため、決勝の大舞台を任されることになったのだ。

 本人は、「福元さんは声の存在感が違う。練習も楽しみながら2人で厳しくやれている。自分もまた違う部分が成長している気がします」と語る。その言葉通りの信頼関係は、この日彼女は着用した福元のグローブが物語っていた。

 今シーズンのINACの最も大きな変化は守備力だ。タレントが揃うため、攻撃が注目されがちだが、ボランチはもとよりサイドハーフ、トップの選手の献身的な守備が揺るがないため、奪った位置から多彩な攻撃につなぐ一歩になっている。

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