毎試合ヒロインが生まれるヤングなでしこ。U-20W杯の準決勝へ (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 もう1人の立役者はやはり2ゴールを決めた松原志歩(セレッソ大阪堺)だろう。カナダ戦ではヘディングシュートを外し、「あんな失敗したことない」と少しへこみ気味だった松原だが、すべてを払拭する2ゴールを奪った。フリーで外すこともあれば、シュートチャンスを逃すこともあったが、それでもDFの死角に陣取り、こぼれ球を引き寄せるゴール嗅覚はこのチームでは随一だ。

 ハットトリックも目前だったものの、「1対1には弱いみたいです」と苦笑い。絶好のチャンスはGKの正面キャッチと相なった。そんな課題もここから覆していく力を十分に秘めている。

 立役者として2人を挙げたものの、すべての選手がそれぞれの役割を果たしたことで勝利を引き寄せた試合だった。籾木、上野の前線からのプレス、特に後半にポジションを自在に変化させながらブラジル守備陣を翻弄した長谷川ら攻撃陣の運動量は相当なものだった。

 乗松瑠華(浦和レッズL)、市瀬菜々(ベガルタ仙台L)のCBコンビも互いにカバーリングしながら攻撃の起点になることも多く、試合を重ねるごとに攻撃のバリエーションは増えていきそうだ。何より自分たちで意図を持って、細かいポジショニングと相手との間合いを推し量りながら連係を生み出すことができた。高倉麻子監督のいう「攻守一体」のサッカーが表現された90分間だった。

 また、高倉監督の選手を把握する眼が際立った試合でもあった。準々決勝までの中3日で、コンディションとパフォーマンスを見極め、抜擢した2人が期待以上の結果を残した。

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