元ヤングなでしこ田中陽子の目に涙。ノジマステラが悲願の2部優勝 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 チーム全員が同じ気持ちだった。目覚めたノジマステラは、誰もがゴールを意識した動きに変わる。放ったシュートは後半だけで15本に及ぶ。それでも、C大阪堺の守備は崩れない。ここのところ頼みの綱となっていたセットプレーでも相手の守備のほころびを見出すことができない。キッカーの田中陽子は前半、ニアからファーサイドまであらゆる場所にボールを送り込んでいた。考えあぐねた後半、田中はCKの照準を変える。――GK前で跳ね返し、こぼれ球を狙う――この作戦が的中した。仕留めたのは高木ひかりだった。

「何が何でも決めたいと思った。こぼれ球でしたけど、いいところにいたなと自分でも思います(笑)」

 遠かった1ゴール。昨シーズンもこの遠い1ゴールに泣いた。84分、攻め続けた末にこじ開けた値千金のゴールは、全員の想いを乗せてネットに突き刺さった。ここにチームの確かな成長の証があった。

 そこからロスタイムを含めた約10分間、ベンチでは控えの選手と交代で下がってきた選手が、チャンスやピンチに両手を握りしめながら祈る姿があった。終了直後は勝ち切れなかったことで、また優勝は持ち越したと思っていた選手たち。しかし、他会場で行なわれていたちふれの試合がドローに終わったことで、ノジマステラの優勝が決定した。終了の握手から選手たちに優勝決定が告げられるまでわずか数秒。曇っていた選手たちの表情は一瞬で歓喜の笑顔に変わった。

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