イラク戦に見る「弱くなった日本」。
ハリルJは20年前に逆戻りした

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Fujita Masato

「デュアルで負けた」。ハリルホジッチは1対1の局面で体力負けしたことを強調した。新しい言葉に弱いメディアの関心をそちらに誘おうとしたのかどうかは定かではないが、1年半前(アジアカップ)には一切、露呈しなかった問題が、なぜこの試合で表面化したかと言えば、サッカーが汚いからだ。

 競り合いを仕掛けていたのは日本。対するイラクは後半なかば過ぎからそれをやめ、パスで展開するサッカーに切り替えていた。フィジカル面で勝る相手に、バックラインの背後に蹴り込むサッカーを実践する姿勢にこそ、デュアルで負ける原因はあるのだ。

 自業自得とはこのことだ。自分自身のサッカーにこそ問題の根が潜んでいるという自覚を持ち合わせていない監督。あるいはその事実を、隠そうとしているのかもしれない監督。

「フィジカル面の不足」。2006年ドイツW杯で、敗因を問われたジーコが、会見の席で開口一番吐いた台詞をふと思い出した。最初に挙げる原因がそれですか? いまさらそれを言うなんて、と唖然とさせられた記憶がある。

 責任は自分にあらず。日本人選手の一番の弱点を、肝心な場面で持ち出すことで自らの責任を回避しようとする姿。両者は共通項で結ばれている。恐れ入るばかりだ。だからどうするのか。どういうサッカーをすべきなのか。前提条件を踏まえた上で考察し、実践するのが監督の仕事だ。そこのところを放棄し、日本人が潜在的に抱える弱点をあらためて力説する姿に、この監督の限界を感じる。

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