イラク戦に見る「弱くなった日本」。ハリルJは20年前に逆戻りした

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Fujita Masato

 劇的な勝利に、ああ、よかった、よかったと喜びを爆発させたくなる気持ちは、これっぽっちも湧かない。ハリルホジッチは試合前、「彼らはマレーシアで1週間、トレーニングを積んできた。それに引き替え......」と、いつものように自軍のコンディションの悪さをアピールしたが、相手のイラクは国内でサッカーができる状態にない国だ。世界で最も困難を抱えた戦争当事者国。コンディション比べをすべき相手ではない。

劇的な勝利に思わずガッツポーズのハリルホジッチ監督劇的な勝利に思わずガッツポーズのハリルホジッチ監督 しかも、スタメン11人の平均年齢は23.3歳。U‐23同然の、「相手にとって不足あり」のチームだ。少なくとも、格の違いを見せつけるような内容でないと、本来、お話にならない。2015年1月に行なわれたアジアカップでイラクと対戦したときは、それができていた。スコアは1-0。しかし、あらゆる1-0の中で最も差のある内容と言いたくなる、まさに完勝だった。

 時のアギーレジャパンは準々決勝でUAEに敗れ、ベスト8に終わった。激しく非難され、サラゴサ監督時代の八百長疑惑が取り沙汰されたことも重なり、解任の憂き目に遭った。しかしいま振り返れば、症状は、ハリルホジッチの解任問題が取り沙汰されている現在より、当時の方がはるかに軽かった。

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