サッカー五輪代表、ブラジルに惨敗で「本当の自分たち」を知る (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Koji Watanabe/Getty Images

 とはいえ、本番直前の今、この結果を引きずることは得策ではないし、そもそも、この結果を気にする必要もない。

 わずか8カ月ほど時間を巻き戻せば、今回のU-23代表はリオ五輪本大会への出場さえ厳しいと思われていたチームである。厳しいというより、絶望視されていたと言うほうが実態に近いかもしれない。事実、最終予選を兼ねたアジアU-23選手権でも、日本が負けていても不思議はなかった試合がいくつもあった。

 にもかかわらず、アジアを制し、リオ行きを決めたことで、いつの間にか彼らはメダル候補であるかのように持ち上げられてしまった。そして、手倉森誠監督をはじめ、選手たちも、そんな過度の期待に乗っかる発言が増えた。率直に言って、現在の状況にはかなりの違和感を覚える。

 その意味では、本番を前に自分たちの本当の立ち位置を思い知らされた惨敗は、むしろよかったのかもしれない。

 グループリーグで対戦する3カ国に、おそらくブラジルよりも強いチームはないだろう。リオ五輪出場国中、最高と言ってもいいスピード、テクニックを実際に体感したことで、「これより強いチームはない」と開き直るきっかけになれば、ショッキングな敗戦も貴重な予行演習となる。

 現在のU-23代表は、もともと国際経験が少なく、成功体験に乏しい世代。せっかくアジアで得た自信を失い、ショックを引きずってしまうことは避けたいが、この試合が無欲で戦うきっかけになるのならば、悪くない惨敗だったのではないだろうか。

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