【なでしこ】高倉イズムを理解できない選手はU-20に追い抜かれる (5ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「ボールを簡単にはたけるときもあって、次の選択肢を持てることが多くなった」と佐々木本人も手応えを掴んでいる。アメリカ遠征では左サイドバックで世界トップレベルのスピードに圧倒されていた佐々木。正直に言って、あのアメリカ戦では彼女の強みを感じ取ることはできなかった。それでも指揮官がチャンスを与え続ける理由がどこにあるのか注目していただけに、このスウェーデン遠征での成長で合点が行った。

 阪口、永里、有吉、熊谷といった経験値のある選手に、今後を見据えた若手をどう成長させていくか。最大の有力選手層は今秋にU-20女子ワールドカップで世代別連続世界制覇を狙うU-20女子代表メンバーだ。彼女たちは、初めての国際大会を経験するU-16年代から高倉・大部ペアの指導を受けている。おそらく、現在なでしこジャパンの面々が四苦八苦している高倉イズムを最も色濃く表現できるのは彼女たちだろう。

 今秋の連覇への挑戦が終われば、彼女たちは満を持してなでしこジャパンに本格参戦するはず。そうなれば、経験値のあるなでしこの選手たちでさえ、高倉イズムの理解度ではU-20世代に追い越される可能性もある。

「私が描きたい画をU-20の選手たちはある程度持っている。どう混ぜていくか。どこかで決断しないといけない」(高倉監督)

 2カ月連続の海外遠征を経て、噴出した課題に生半可な取り組み方をしていては、指揮官の愛弟子たちはいとも簡単に今のなでしこジャパンを追い抜いていくだろう。競争が激化することは必至なだけに、次の招集までの自己への向き合い方で明暗が分かれそうだ。

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る