【なでしこ】高倉イズムを理解できない選手はU-20に追い抜かれる (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 特に前半、表現できなかった要因のひとつは動きのないパス受け渡し。スウェーデン戦での最大の敗因として"動きながらのパス"の欠如があった。中2日と限られた時間であっても、動くこと、思考を止めないことを意識したトレーニングが行なわれていたが、強めのプレッシングがあると動きがピタリと止まってしまった。ボールだけが動く展開に、有効なスペースは生まれず、寄せられてミスパスを奪われる繰り返し。

 時折ロングフィードやDF裏を狙った縦パスが繰り出されたが、ことごとくオフサイド。その数10本。これだけ引っかかればゴールが遠いのも致し方ない。アメリカ、スウェーデンと強豪を相手にしての連敗以上に、監督のこだわる攻撃を表現するまでにも至っておらず、それ以前のところでブレーキがかかっていると言わざる得ない内容だった。

 止める、蹴る、のシンプルな技術は必須だ。高倉監督がこだわる攻撃スタイルには"動きながらパスを受ける"ことが最低条件にある。残念ながらこれを体現できている選手は数名、片手ほどしかいないのが現状である。今だからこそ、根本的な個の技術向上に取り組まなければ、何も構築することはできないだろう。

 このスウェーデン遠征は、先月のアメリカ遠征とは異なる試みでスタートした。それが4-1-4-1のシステムだ。

「この形は難しいとわかっているけど、今しかチャレンジできない」(高倉監督)と、あえてこの時期に取り組んだ。高倉監督は型にハメることを嫌う。重要なのは4-1-4-1という視野だ。

 今回のアンカーは熊谷が担った。この位置で必要になるのは、熊谷の長所である1対1に強い守備力と、新たな資質として直接攻撃を組み立てる"さばき"だった。

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