【なでしこ】高倉イズムを理解できない選手はU-20に追い抜かれる (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ようやく形になったのは18分、右サイドバックの有吉佐織(日テレ・ベレーザ)のクロスに、前線へ永里が走り込んだ場面だった。30分を超えたあたりから、日本がボールをバイタル付近にまで運ぶ場面が増えたが、クロスの精度も悪く、フィニッシュまでこぎつくことができない。それでも、阪口のスルーパスを、永里を介して横山久美(AC長野)がフィニッシュした35分と、44分に再び有吉のクロスに田中美南(日テレ・ベレーザ)をひとつ飛ばして、ファーサイドの横山が合わせようとした場面は確かにゴールの匂いが漂った。

 後半は布陣を4-4-2へ。運動量と機敏性のある中里優(日テレ・ベレーザ)と増矢理花(INAC神戸)を投入。すると50分、阪口からパスを受けた中里が左サイドからドリブルで仕掛け、相手DFをフェイントでかわしてゴール。ようやく日本が先制点を手にした。

「入る前からボールを持ったら積極的に行こうと思ってました。今日はサイドハーフだったので攻撃の形は出せたと思う。本当はスウェーデン戦で決めたかった......」と、中里はなでしこ初ゴールの嬉しさと複雑な思いを垣間見せた。

 追加点が入ったのは75分。有町紗央里(仙台L)の強烈なシュートがクロスバーを叩き、跳ね返ったところを千葉園子(ASハリマ)が押し込んだ。途中出場の2人が決めたゴールだった。この後も最後まで日本ペースで進んだ試合は2-0でテストマッチながらもようやく初勝利を手にした。

 しかし、同時に手放しで喜べない勝利でもあった。クリシャンスタッドは、なでしこジャパンと対戦するということでハイプレスで仕掛けてきていたとはいえ、今シーズンはリーグ最下位と低迷しているチーム。「圧倒したかった」と厳しい表情を見せた高倉監督の言葉通り、圧倒した上で、目指す攻撃スタイルを表現しなくてはならない試合だった。

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