元なでしこ・永里亜紗乃が語る「引退した今だから伝えられること」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「私だったら姉をこう使うのにっていうイメージは、毎試合感じながらベンチにいました。彼女のポテンシャルを考えるとこっちが先行してパスを出すくらいじゃないと1テンポ遅くなるから、こっちが先に出して走らせるイメージ。当てやすいからどんどん当てて、クロスに関しては絶対にスペースに出せば見つけてくれるから。あとは......」

 優季とどう攻撃を組み立てるのか、日頃から何度もイメージしてきたのだろう。次々にアイデアが出てくる。それらを実現させようとしていた矢先、亜紗乃の膝が悲鳴をあげた。2、3年前から痛みはあったものの、事態が悪化したのは昨年のFIFA女子ワールドカップカナダ大会後のことだった。

「ドイツでドクターに見てもらったら、このまま2、3年サッカーを続けていたら歩けなくなるかもしれないと言われたんです。それでも、リオデジャネイロオリンピックの最終予選までにはまだ時間があったから、続けられる可能性を探りました」

 そこまで亜紗乃がオリンピックにこだわったのは、なでしこジャパンが優季とともにプレーできる唯一の場所だったからだ。

「姉とプレーするためには、なでしこジャパンに入るしかないという結論に数年前に至りました(笑)。彼女がいなければ目指してないし、そこまでの情熱はなかったと思います」

 亜紗乃は日本での手術を選択する。わずかな可能性にかけたのである。

「ダメでした。痛みが引かなかった。もちろん手術前よりも痛みは軽減されましたが、とてもじゃないけど、プロでやる資格はないと思うくらいの痛みがあった。100%の力でできないからフラストレーションがたまって、そんな状況では評価されるはずもなく......悪循環でした」

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