7月3日。「中田英寿の引退から10年」で
フランスの空に想う

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki  photo by AFLO

 中田英は結局、チャンピオンズリーガーにはなれなかった。パルマに移籍する際に発生した30億円強の移籍金が、ネックになったことは間違いない。それ以上の昇りの階段が中田英に用意されることはなかった。

 中田が引退したのは29歳で、それから10年が経過するが、リール戦の敗戦は返す返すも痛く感じる。日本人初のチャンピオンズリーガーになっていれば、あるいは中田英は、現在も現役でいた可能性がある。中村俊輔がそうであるように、息の長い選手として。僕はそう見ている。ハリルホジッチは罪作りなことをしたものだ、と。

 だが、それこそが勝負の世界。プロの世界だ。その現実は厳しいとはよく言われるが、身体は動くのにプレーするに相応しい場所が見当たらなくなった中田英のこの一件は、象徴的な事例と言っていい。

 昨季、日本人チャンピオンズリーガーの数は「ゼロ」だった。これも10年ぶりの出来事だ。来季(2016-17)は岡崎に加え、香川真司もその舞台に復帰することになるだろうが、かつての勢いは感じられない。数的にもまるで伸びていない。もっと語られるべき話だと思うが、語ろうとする人は思いのほか少ない。

 中田英でもうひとつ思い出すのは、五輪だ。シドニー五輪の準々決勝、対アメリカ戦。日本サッカー史に残る好ゲームのひとつとの認識が、僕にはある。スコアは延長を経て2-2。決着はPK戦に委ねられた。

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