7月3日。「中田英寿の引退から10年」でフランスの空に想う (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki  photo by AFLO

 中田英はこのシーズンの初め、ローマからパルマに移籍してきた。移籍金は30億円超と高額で、そこにパルマの彼に対する期待のほどが現れていた。

 もっとも、前シーズンの終盤まで、中田英の評価は低かった。その1年半前、ペルージャからローマに移籍したときに発生した金額は20億円超。それがそのとき、10億円でも買い手がつかないほどに下落していた。

 フランチェスコ・トッティにトップ下のポジション争いで敗れ、ベンチを温める機会が増えていたからだ。だが、その状況はシーズン終盤のユベントス戦で一変した。

 ローマはそのとき、セリエAで首位に立っていた。だが、ユベントスが猛追中で、その差は急速に詰まっていた。ローマホームのこの直接対決も、後半なかば過ぎまで0-2でリードを奪われていた。18年ぶり3度目の優勝を狙うローマには、極めて危険な流れにあった。黄色信号は、今にも赤信号に変わりそうな雲行きだった。

 そこでローマの救世主になったのが、中田英。後半の途中、交代出場でピッチに登場すると、アレッシオ・タッキナルディからボールを奪い、鮮やかなロングシュートを左隅に決めた。さらに、中田英は終了間際にもう1本、インステップで矢のような強シュートを放つ。GKがセーブしたこぼれ球を、ヴィンチェンツォ・モンテッラが押し込み同点。中田英は、自らの力で試合を引き分けに持ち込み、ユーベの猛追を止めることに成功した。

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る