美しき敗戦。ボスニア戦のハリルJは「久しぶりにいいものを見た」 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ボスニア・ヘルツェゴビナと日本の違いについて、ハリルホジッチはしきりに体格を強調した。だが、技術的にも彼らは、日本人にはない類のものを持ち合わせていた。大きいのにテクニシャン。それに身体の使い方の巧さが加わる。局地戦では日本はかなりやられていた。この日、2ゴールを決められたミラン・ジュリッチはその最たる選手になる。

 だが、そこで混乱をきたしたいつもの日本とは違った。ともすればダメージを浴びた分、強引になり、悪い奪われ方をしたものだが、そうした変な気負いもなかった。ボールに対する反応も、最後まで鈍らなかった。ポジショニングに疑問を感じる機会もいつになく少なかった。

 つまり実力負けだった。ホームの1対2は、中立地なら0対2か1対3。アウェーなら0対3でもおかしくない。外で戦えば、惜敗は完敗に変化する。その機会をなぜ増やそうとしないのか。なぜ負ける機会を作ろうとしないのか。今回のキリンカップにしても、日本はなぜ、ボスニア・ヘルツェゴビナと同等かそれ以上とおぼしきデンマークとの対戦を避けたのか。そもそも誰がこうした決定を下しているのか。

 ムード作りを演出しているのか。日本サッカーにとって一番の敵が楽観論であることは、過去を眺めれば明白。危ないと言われた時の方が結果は出ている。

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