美しき敗戦。ボスニア戦のハリルJは「久しぶりにいいものを見た」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 とはいえ、だ。そのボスニア・ヘルツェゴビナに対して、日本が手をこまねいていたわけではない。食い下がる姿も悪くなかった。負けたけれど、内容は上々。試合後、弱小国相手に勝ったはいいが、内容はイマイチだったこれまでの試合とは異なる満足感に襲われたものだ。

 よく見れば、日本も悪くないサッカーをしていた。「スピード感をベースにしたパス交換」とは、ハリルホジッチの語る日本の魅力だが、それをケレン味なく淡々と連続的に繰り出すところがよかった。

 ベースになっていたのは平等さだ。誰もがプレーに絡めそうな、活躍の機会に巡り会えそうなサッカーだ。あっさり薄味のサッカー。チャンスがどこからともなく生まれてきそうな気配を漂わせているところに好感を抱いた。本田圭佑、香川真司不在。それは日本のエースとされるこの2人が怪我のためにスタメンを外れたことと少なからぬ関係がある。

 彼らがいたら、ケレン味のないサッカーは披露できなかったと見る。ピッチの上をボールが快活そうに滑る機会は減っていたと、濃くて難しいサッカーになっていたと考える。

 そして何よりバランスがよかった。ピッチの上に穴は存在しなかった。悪いボールの奪われ方が、ここまで少なかった試合も珍しい。

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