アメリカで「なでしこの自信」が復活。高倉監督&大部コーチの手腕が光る (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 チーム招集からわずか2日で強豪アメリカとの2連戦に臨んだ高倉麻子監督の初陣は1分1敗、5失点3ゴール。準備不足の中、上々の滑り出しと言える。今回、高倉監督が選手たちに求めたものは決して高度な戦術ではなく、シンプルな"約束事"だった。

"プレッシングはしっかりとボールに行くこと""仕掛けたら足を振り抜くまでを実行すること""常に思考すること"などを根幹に、ちょっとした"コツ"を伝えるだけ。あとは選手たちがピッチでどう表現するかを確かめる作業でもあった。

 さらに"なでしこジャパン"の経験の有無に関わらず、個の能力を把握し、バランスを考えた配置を行なったことで全員のモチベーションが高まった。初戦で千葉園子(ASハリマ)を中盤3枚のど真ん中に据えれば、第2戦ではボランチにチーム1小柄な148㎝の中里を起用するなど、初招集組にもキーポジションが与えられた。

 また経験豊富な選手たちにもこれまでとは異なる動きを要求した。大儀見優季(フランクフルト)はサイドハーフ、岩渕真奈(バイエルン)は1トップとしての可能性を追求させ、以前と同じポジションであっても、ボランチの阪口にはゴールに直結する積極的なパス配球を、CBの熊谷には組織的なDFコントロールを求めた。「誰にもポジションをあげているつもりはない」と高倉監督が言うように、全員がチャレンジャーであることが選手間に経験値による壁を作らせなかった。

 そして"できないこと"を自覚させたことは何よりも大きかったように思う。できているつもりで積み重ねてきたものを自らゼロに戻すことは難しい。新たにチームを生み出す今しかできないことでもあった。

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