「どん底」なでしこジャパンに見えた、わずかな未来への希望

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 この予選で途中出場を含め、中島はすべての試合のピッチに立っている。左サイドハーフの起用が2戦続いたが、その後は流動的。ピッチに立てるのなら、ユーティリティも強みと割り切った。格下とはいえ、他国もゴール奪取に手こずったベトナムを相手に中島のプレーは最もエッジが効いていた。

「複数のポジションができるというのは自分のいいところと言っていいのかわからないですけど……。監督に言われたところを責任を持ってやるしかないので、それでこうした結果が出たのはよかった」

 宮間の抱くイメージを理解し、トップに入る大儀見のポジションを予測する。動きながら流れの中で、スピードを落とさずにボールをキープし、前方へラストパスを送れる数少ない選手だ。

 そしてもうひとり、バイタルエリアでコンスタントに絡んでこられるようになったのが横山。この日も後半途中から大儀見とともに得点を挙げるターゲットとして送り込まれた。そこで魅せたのは、90分のゴール。宮間からタテに入ったボールを大儀見がキープし、マイナスへ戻したところを宮間がシュート。GKがはじいたところを狙っていた横山がツメた。このタテの攻撃パターンは彼女たちが求め続けた形。痛快な流れだった。

 中島、横山は東京オリンピック世代。このなでしこにしかない攻撃のリズムをそのどまん中で体感し、反応することができるこのふたりの成長は、この予選において芽生えた未来の希望だ。この予選で日本女子サッカー界が失ったものは計り知れない。けれど、16年前のなでしこたちも同じ経験を繰り返し、そこから這い上がって世界一へとのぼりつめた。だから、強くなれたのだ。次なるステージを目指すものたちは、栄光の数ではなく、その戦う姿を継承していかなくてはならない。

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