崖っぷち上等。なでしこは、チャレンジャーに戻って強くなる

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そして攻撃面では、中盤でボランチの宮間が完全にケアされてしまい、動きを封じられていたことで、大儀見が下がってボールを受けざるを得なくなった。しかし、受けに下がってもさばくだけで前を向けない。次のゴールが勝負の分かれ目といった場面で、大儀見が前を向いていなければ相手にとって脅威にはならない。宮間も同様だ。

 一気に局面を打開できる得意のダイレクトパスが、スローインからの一瞬でしか生まれないならば、早い段階でボランチは川村優理(ベガルタ仙台)にスイッチし(実際には84分に投入)、宮間を一列上げての4-2-3-1や、右サイドへスライドさせてピンポイントクロスの配給率を上げる打開策も見てみたかった。

 攻守において共通するのは、連動した動きができていないことだ。連係・連動はなでしこの基本である。これをなくしては、攻撃も守備も成り立たない。もちろん個で勝負することは必要だが、それが線にならなくてはなでしこの強みは半減する。

 逆にオーストラリアはフィジカル勝負だけでなく、日本のリズムを崩しながら、狙ったところにスペースを生み、的確にスピードのあるボールを配給した。自分たちの特長を最大限に生かしただけでなく応用したのである。前回、ロンドン五輪予選の出場枠からはじき出されたオーストラリアの、日本戦にかける取り組みの凄まじさを感じずにはいられない。対策を練り倒し、体に叩き込んで臨んできたオーストラリアと、実戦でやりながら馴染ませようとした日本との差は明白だった。

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