天敵イラクを倒してリオ決定。植田直通が晴らした3年2カ月分の悔しさ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 試合は4度目の対戦にして、日本が初めて先制した。26分、左サイドを突破したFW鈴木武蔵のクロスを、FW久保裕也がスライディングしながら右足で合わせた。久保が語る。

「触るだけだった。ナイスボール。武蔵のボールがよかった」

 しかし、43分に右CKからイラクに同点ゴールを許すと、試合はこう着状態に。互いに決定機が乏しい試合は、残り時間も15分を切り、そのまま延長戦突入が濃厚かに見えた。

 ところが、手倉森誠監督の思いは違った。

「試合終盤、おそらくイラクは延長も考えたのではないか。そういう雰囲気を感じた」と振り返る指揮官は、「一回、相手陣のゴール前に押し込んだら、何か起こるだろうなという予感がした。最後の15分で投入した浅野(拓磨)で何とか突破口を開きたかった」と胸の内を明かす。

 その考えは、選手にもしっかりと伝わっていた。MF原川力は言う。

「拓磨の交代(出場)は、チームとしてそこで(攻撃の)スイッチが入るというか、意図が分かりやすい選手。勝負どころで監督が何を考えているかは分かるし、そこでスイッチを入れられる」

 果たして試合は、「誰も書けないようなシナリオの幕切れ」(手倉森監督)を迎える。

 すでに時計の針は90分を過ぎ、アディショナルタイムの目安もあと1分少々という93分、指揮官の狙いどおり、敵陣の深い位置でFW浅野がボールをキープすると、サポートしたFW南野拓実がパスを受けて、ゴール前へクロス。一度はGKにパンチングで防がれたボールを原川が拾い、左足で強烈なミドルシュートを突き刺した。

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