リオまであと1勝。弱みを強みに、不利を有利に変える手倉森マジック

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 イランにしても準々決勝に照準を合わせ、グループリーグ第3戦では一部主力を休ませはした。だが、日本戦での先発メンバー11名のうち、3名は全4試合に先発し、7名が3試合目の先発出場。一方の日本は、先発メンバー11名のうち、6名が3試合目、残る5名は2試合目の先発だった。

 こうなると、前の試合からの間隔だけでなく、蓄積疲労の差も見逃せない。コンディションの差は、試合時間が進むごとに明らかになっていった。

 前半こそ、押し込まれる時間が続いた日本だったが、徐々にイランはペースダウン。DF岩波拓也が「75分くらいから、相手がプレスに来られなくなった」と言えば、FWオナイウ阿道も「相手が後半途中からバテてきたので押し込めた」と振り返る。

 後半の終わりごろにはイランの選手の足がつり始め、延長戦に入ると、流れが一気に日本へと傾いた。迎えた延長前半の6分、MF豊川雄太がヘディングシュートを決め、日本は待望の先制点を手にした。

「勝てたのはみんなのおかげ。みんな120分間ハードワークしてくれていたので、自分が助けられたらいいな、と。点を取ることが一番の助けになると思っていた」

 殊勲の豊川がそう語ったように、結果的に途中出場の背番号14がヒーローにはなったが、この勝利はそれまでの時間で猛攻に耐えながら相手を疲弊させ、消耗戦に持ち込んだ全員の力によるものである。

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