なでしこ2部のAC長野、苦境を乗り越え悲願の1部昇格へ

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 攻守のキーマンをもがれた影響は第3クールの頭から表れた。まず、スフィーダ世田谷FCに競り負けて初黒星を喫し、暗雲の端緒が見え始めた。続いてホームで迎えた2位ノジマステラ神奈川相模原との直接対決を制し、ホッとしたのも束の間、その翌節、3位の日体大FIELDSに0-7と惨敗してしまった。

 乱高下を繰り返すチーム状態。守備は持ちこたえることができず、攻撃では組み立てることができない。特に7失点のショックは隠せなかった。この試合では頼みの綱である横山が右足首の故障を押して出場していた。最後までピッチには立っていたものの、踏ん張りのきかない右足では、シュートはもちろんプレスも十分にかけることができない。屈辱の大敗だった。

 危機感がピークに達したこの大敗から2週間、本田監督は最終ラインのポジションを懸命にこねくり回していた。このメンバーで最良のバランスを見出さなくてはならない。崩れかけたメンタルを抱える選手たちを見て、本田監督はサブメンバーのモチベーションケアにも力を注ぐ。

「キミたちが踏ん張らなければチームは崩壊するよ」

 その足はリハビリルームにも向けられた。今、チームがバラバラになれば、悲願である初優勝がその手から滑り落ちてしまいかねない。指揮官はゲームの中でもその想いを形にして示した。わずかな時間でも、ベンチを支える経験ある選手を起用した。

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