横山久美、杉田亜未が中国戦で見せた、なでしこ生き残りへのゴール (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

“なでしこジャパン”として行動していくうちに、それは「憧れから目標に変わった」(杉田)。体が小さい分、体幹トレーニングを積極的に取り入れ、フィジカルで不利でもそこは判断力とタイミングでカバーする。目下、そのタイミングを得るため奮闘中だ。

 この試合でも、長身の中国選手に対し、体をねじ入れるようにして当てながらボールを奪う杉田の姿は、フィジカルの差を一切感じさせない瞬間があった。その確率を上げること、パスのブレなどまだまだ改善点はあるものの、今大会2ゴールを挙げた得点力も含めて、完璧ではなくても、なでしこジャパンに関わってから必死に取り組んできたことを形にできたことで自信につながったはずだ。

 そしてもうひとりはカナダワールドカップとは打って変わってここまで動きが悪かった菅澤だ。必ずファーストチョイスは自分自身でゴールを目指すと誓って臨んだ試合だった。このラストパスを選択する直前は自らゴールに向かおうとしていた。それでもゴール前で冷静な判断を下した。

「正面にいた川村選手を使うよりも横にいた杉田選手の方がシュートの角度的にもいいのかなと思った」(菅澤)

 彼女の判断は、自身のゴールにはならなかったが、チームの自信を取り戻す杉田のゴールへとつながった。

 何とか全敗は免れた。大収穫と胸を張れる大会ではなかったが、それぞれが自らの実力と向き合わざるを得ない2週間だったに違いない。いずれは、ドイツW杯・ロンドン五輪・カナダW杯を経験した選手たちは退いていく。そのとき、この世代が中心となってなでしこジャパンを担っていかなければならない。この大会を通じてプレイ、メンタル両面で痛感したであろう“甘さ”は、国際舞台でなければ拭えないものではない。あとは自分次第。これまでと同じ姿勢では、今の立ち位置は変わらない。学んだ姿を、今度はなでしこリーグで見せてほしい。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る