横山久美、杉田亜未が中国戦で見せた、なでしこ生き残りへのゴール (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 残り7分となったところで切り札・横山久美(AC長野)が登場するやいなや、京川からのパスを受けた横山がDF裏へ抜けてシュートを放つ。惜しくもGK正面だったが、一気に流れを引き寄せた。試合を決めたゴールは必然。「相手が食いついてきていたのでバイタルが空くと思った」という杉田のパスを受けた中島が絶妙なスルーを横山へ。「ナイスボールが来た」(横山)と、鮮やかにDFを抜き去るとGKの動きもしっかりと見据えたゴールでチームを救った。

「これが最後のチャンスだと思っていた」という横山。3月のアルガルベカップでなでしこデビューを果たした横山は、ポルトガルという格下相手とはいえ、得意の反転してからの豪快なシュートで初ゴールをマーク。しかし、カナダワールドカップではバックアップメンバーに留まった悔しさがある。

 そして今回の招集でリオオリンピックへの可能性が広がった。その扉を開くことができるかは自分次第だ。韓国戦でも切り札として起用されながら、期待に沿うプレイは出せなかった。しかし、この中国戦で155cmの小柄なストライカーは最後のチャンスをこれ以上ない結果で掴みとった。

 現在、なでしこジャパンには切り札的存在がいない。佐々木監督が横山の途中出場にこだわってきたのは、流れを引き寄せる絶対的な要素を発揮できるか否かを実戦で見極めたかったからに他ならない。本人も自覚していたように、これが生き残りをかけたラストチャンスだった。

 ロスタイムにダメ押しとなった杉田のゴールにもふたりの選手の想いが詰まっていた。ひとりはもちろんゴールを決めた杉田。3月のラ・マンガ国際大会ではU-23女子代表のキャプテンを務め、カナダワールドカップの国内直前合宿ではバックアップメンバーとして帯同した。

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