松田直樹の命日に思う。いま日本代表CBに欠けているもの (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 松田は「ザゲイロ論」を熱く語っていたことがある。ザゲイロとは、ポルトガル語でセンターバックを指す。

 一流のザゲイロは、単なる強さや速さに依存しない。彼らのプレイを読む力は“予知能力”にも近いだろう。卓抜したセンスをベースに、途切れない集中力と経験の蓄積を融合させ、最善の選択をし続ける。だからこそ、自分より強く速い相手であっても守りきれる。相手の動きを鋭く読み、守る体勢を作れたら怖いものなしである。

 例えばブラジルW杯においても、ザゲイロが主役になる機会は少なくなかった。

 メデル(チリ)、マルケス(メキシコ)、ゴディン(ウルグアイ)、ヴァラン(フランス)、コンパニ(ベルギー)、サパタ(コロンビア)、ガライ(アルゼンチン)、フンメルス(ドイツ)……決勝トーナメントに勝ち上がったチームには、必ずと言っていいほど屈強かつ知的なザゲイロがいた。彼らは“どこで敵の攻撃を分断し、いかに周りと連係し、効率的に守れるか”を心得ていた。

 ブラジル代表のチアゴ・シウバ、ダビド・ルイスは世界最高レベルだろう。前者は冷戦沈着、あらゆるパスコースを読む。攻撃者のプレイを絶えず予測し、アプローチする際にはリスクマネジメントを欠かさない。後者は風貌からパワー系に映るかもしれないが、どこで流れを切るスライディングタックルをするのか、誰よりも心得ている。刮目(かつもく)すべきはチャレンジしたときの成功率だろう。

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