【なでしこW杯】宮間あやの言葉で振り返る、準優勝への歩み (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 誰が出ても戦術をこなせるに越したことはないが、メンバーが定まらないとなると、掘り下げるべきプレイのパターンが無限に広がってしまう。それをすべて体得、体現するには時間がない。

「それでもやらなきゃいけない。練習でも成功例は......なくはない。精度を上げなければならないけど、なくはないです」

 宮間の冷静な口ぶりからも、苦しい胸中は察することができた。初戦のスタメンを決める"テスト"は本番の2日前まで続けられた。

 佐々木監督は、ワールドカップ本番で競争させながらチームを成長させる、リスクの伴う形を選んだ。これが功を奏した部分もある。まず、第一に相手チームが的を絞ることができない点だ。人が決まらなければ、相手も戦略を練ることができない。

 チーム内の多少のちぐはぐは、これまでの経験でなんとかカバーしてきた。ただ、やはりそれはグループリーグだからできること。初出場国ばかりのグループに入っていた日本は、だからこその難しさを差し引いても、『チームを作りながらでも勝利できる』程度には、他グループに比べて楽な戦いをしていることは否めかった。もちろん、この顔触れだからこそ取れたチーム作りの方向性だったとも言える。

 しかし、想像以上に選手たちのコンビネーションの精度が上がらない。さらには安藤梢(フランクフルト)が骨折でチームを離脱するという事態に陥り、岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)はケガによる別メニューを強いられており、ゴールゲッターが決定的に不足していた。切り札がない。3連勝で首位通過を勝ち取ったものの、選手たちに笑顔はなく、決定力不足や守備への不安を抱えたまま決勝トーナメントに入ることになった。

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