豊田陽平「ハリルさんほどの細かい指摘は初体験」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki YUTAKA/アフロスポーツ●写真

 勝ち点3という目的があった上での手段。彼はストライカーとしてその認識を深め、技量や判断を研ぎ澄ませてきた。この思考の序列が豊田という選手の基礎を形成している。

「チームのためにプレイするか、自分がゴールするか。そのパワー配分はどちらのパーセンテージが多すぎても、FWは駄目なんですよ」

 豊田は独自のストライカー論を語る。

「献身性や犠牲的精神で周りを生かすというのはチームの勝利には必要なことで、それをするとFWの価値は高まります。チームの潤滑油になることで周りから褒められ、ときに崇められる。でも気づくと、“あいつはゴールがない”という反応になっているんです。そして上手いけれど、怖い選手ではなくなっている。それは怖いですよ。いつの間にか、ゴールという仕事ができないFWになっているんです。

 自分は一人でやれるほどうまい選手じゃない。周りに支えられ、補ってもらい、だから自分自身もお返しをして、とやってきました。だからFWとして、チームのために働くことをまず意識しています。

 でも、同時に力の配分を考えてプレイしてもいますね。

 なぜなら、ゴールに近いポジションにいるストライカーは、最後のところで40%以上の力を集中させる必要があります。点を取れる場所は限られ、周りのためばかりに動いているとそこにいられない。周りへの気遣いが80%になってしまったら、ゴールという仕事で極端にパワーダウンしてしまう。そして“人がいい”FWほど、チームのためにという傾向に走りやすい。だから言い方は難しいですが、周りのための仕事でどう力を抜くか、そのパワー配分は大切なんです」

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