【なでしこW杯】打倒アメリカを目指して。求めるべきは成熟度 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 カナダの地で一戦ずつステップアップし、確実にチームは成長していた。4年前と比べて個の成長もあった。だが決定的にアメリカと違ったのはチームとしての熟成度だったように感じる。アメリカは、さまざまなリスクを承知で代表活動を第一に優先させてきた。だからこそ、好調な時間はより研ぎ澄まし、低調な時間はより早く断絶する術を体得していた。

 それに比べると、日本はチームが固まったのは決勝トーナメントに入ってから。「さまざなま計算をしながら勝ち進んできた」と指揮官が言うように、爆発的な勢いではなく、大いに悩みながら一歩ずつ積み上げた結果の決勝トーナメント進出だった。

 その反面、想定外の出来事が立て続けに起こった際の対応に時間がかかってしまう。アメリカはそこを確実に突いてきた。マンネリのリスクを吹き飛ばして熟成したチームになったアメリカは、日本を徹底的に研究し、脅威が目覚める前に叩き潰す形をとった。完全に一枚上手だった。

 最後のワールドカップと決めて臨んだ澤はこのカナダでの戦いに「悔いはない」と言い切ったが、終了後のピッチでは感極まる場面も見られた。まだ伸びるのではないか――ロンドン五輪に続き、アメリカにまたひとつ大きな置き土産をされた。決して簡単ではない世界連覇。けれど、個としてもチームとしても、まだまだ伸びしろを感じる、感じなければならない決勝戦となったことに違いない。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る