なでしこ再び頂点へ。準決勝で表れた「2つの変化」 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 だが、この状況下でも我慢強く、サイド攻撃や裏への抜け出しのタイミングを狙い続けた結果、オウンゴールを呼ぶ崩しにつながっている。なでしこジャパンを表すものとして見た目にも華がある“パス回し”がよく挙げられるが、彼女たちの真の強みは“粘り強さ”にある。互いに譲らない展開で勝利を引き寄せたのはこの“粘り”だったように思う。

 そして、もうひとつの変化は“ベンチとの距離感”だ。先制点となったPKを全員が肩を寄せ合って祈りながら見つめるサブメンバー、そのPKを決めた宮間がベンチへ全力で走り寄ったことや、試合中にベンチから絶えずピッチに向かって声がかけられている姿にその変化は見て取れた。このチームには4年前のような爆発的な勢いはないかもしれない。けれど、さまざまなプレッシャーの中でひとつひとつを見極めながら積み重ねてきた強さ、しなやかさがある。そして、その苦しみを味わってきた仲間と、それを初めて経験する選手が今、ようやくひとつになってきた。

 今大会に入っても常についてまわる“4年前のチーム”の印象。4年前の自分たちと比べられ続けてきたチームが、今、それを乗り越えようとしている。

 奇しくも決勝は4年前と同じアメリカと相まみえることになった。決勝には初戦のケガで離脱した安藤梢(フランクフルト)も戻ってくる。再び揃う23人。最後の決戦の舞台は整った。
「オリンピックはアメリカに金メダルを持っていかれた。ワールドカップは渡さない」(宮間)。

“今の”なでしこジャパンである彼女たちにしかできないプレイがある。目標であったワールドカップ2連覇まであと一勝。なでしこジャパンが再び世界を獲りに行く。

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