なでしこ再び頂点へ。準決勝で表れた「2つの変化」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 なでしこの“キッカー”宮間は落ち着いてボールをセットするとGKを見据えた。ホイッスルが鳴っても動かない。時間を目一杯使い、ようやく入った助走でもフェイクを入れながら焦らし続ける。先にしびれを切らしたのはGKだった。駆け引きに勝った宮間は、GKの動き出しを確認してから、逆サイドへ沈めるとガッツポーズ。初戦に続き、絶対に外せない場面で決める強心臓を見せた。

 その7分後には、今度はゴール前の混戦で大儀見がファウルを取られ、PKに。MFウィリアムスが海堀あゆみ(INAC神戸)の読みよりも、速いシュートを決めて試合を振り出しに戻した。PKは共に確実に決め、互いに良さを消し合う難しい試合だった。

 この試合でなでしこが見せた変化がある。ひとつは“粘り”。押し込まれた時間帯でも決勝トーナメントに入ってから安定している、ファーストDFが入った後のカバーリングの連係を軸として粘り強く我慢し続けた。

「もっとラインコントロールで相手をオフサイドにかけるとか、中盤の距離を埋めたかった」と振り返るのは岩清水梓(日テレ・ベレーザ)。

 特に後半は、これまで高く保っていたラインが下がってしまう苦しい時間帯を最後まで耐え続けた。

 攻撃では、大儀見、大野忍(INAC神戸)の2トップが前試合のオーストラリア戦同様に前からプレスをかけようとするも、イングランドは最終ラインからすぐさまロングボールに転じるため、プレスのかけどころがなかった。ボランチへのマークも徹底されていたため、前線にボールがつきにくい。決定機につながる形にできたのは今大会最も少なかった。

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