なでしこ再び頂点へ。準決勝で表れた「2つの変化」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 準決勝のイングランド戦は、誰も想像していない終結だった。互いにPKをモノにし、1-1で迎えた後半ロスタイム。ピッチ上は拮抗していた。ベンチにいる選手は延長戦に備えて氷のうを作り、もう片方の手にはドリンクボトル。まもなく鳴るであろうホイッスルで戻ってくる選手を出迎える準備を整えていたときだった。

PKを決めてベンチに向かった宮間あやを笑顔で迎える選手たちPKを決めてベンチに向かった宮間あやを笑顔で迎える選手たち 熊谷紗希(オリンピック・リヨン)がパスカットから、すぐさま右サイドの川澄奈穂美(INAC神戸)へつなぐと、ドリブルで運びながらDFとGKの間へ速いボールを送る。中央に走り込んでいた大儀見優季(ヴォルフスブルク)はすでにマークをはがしており、あとは当てるだけ。その危機感を察したDFバセットが懸命に足を延ばしてボールの軌道を変えるが、無情にもそのボールはクロスバーを叩き、そのままゴールマウスの中へ。これが日本を2大会連続の決勝へ導くオウンゴールとなった。

 オウンゴールと言えば事故的な含みを感じるが、この場合は違う。バセットはこの現実に号泣していたが、絶対的な危機にDFとしては当然の選択であり、彼女が触らなければ確実に大儀見の足元へ入っていた。さらにそのファーサイドにはしっかりと岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)が走り込んでいたのだ。川澄の精度の高いクロスボールが入った時点でこの得点は決まっていたようなものだった。

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