なでしこW杯で覚醒。オーストラリア戦で証明した勝負力

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 攻守にチームを安定させたボランチコンビが、阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)と宇津木だ。阪口が攻撃に積極的に加わる一方で、宇津木は1対1の強さを発揮。幾度となく中央ゾーンでのインターセプトでピンチを摘み、チャンスを生み出した。

 3月のアルガルベカップで主力組へ割って入り、その貢献を称えられても「それでもフル出場はできてないんですよね……」と、手応えと伸びしろの狭間で揺れていたレフティ。ワールドカップ本大会が始まってからも、宇津木の指定席はなかった。

 開幕当初、指揮官はボランチでは阪口のほか、澤穂希(INAC神戸)と川村優理(ベガルタ仙台L)を枠とし、宇津木に関して佐々木則夫監督は「ボランチの控えとしておくよりも……」と、初戦と第2戦は左サイドバックで起用した。久しぶりのボランチ起用となったラウンド16のオランダ戦でしっかりと仕事を果たすと、ベスト4入りをかけたこの大一番でスタメンボランチを勝ち取った。

「落ち着いたメンタル状態だった」と冷静に中盤を手中におさめた宇津木。決勝ゴールを挙げた岩渕ではなく、宇津木がプレイヤーオブザマッチを獲得したとのアナウンスが流れた際、ピッチ上でチームメイトから暖かい拍手を送られたことからも、その信頼の厚さを感じ取ることができる。彼女もまた、この大会で成長を見せる選手の一人となった。

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