W杯ベスト8へ。いい距離感が生んだ新たな「なでしこスタイル」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 大野忍(INAC神戸)からのパスが宮間あや(湯郷ベル)に通ると、そこから宮間がクロスを上げて、大儀見が頭で合わせるもバーを直撃。しかし、そのこぼれ球のクリアミスを有吉が豪快にゴールに突き刺した。サイドバックである彼女がこぼれ出てくるエリアに走り込んでのゴール。

「(ゴールが決まって)ちょっとパニックになった」と本人も照れ笑い。ロンドンオリンピックでは決してピッチに立つことはないバックアップメンバーとして帯同し、仲間の雄姿をスタンドで見つめていた。

「あの悔しさがあったから今がある」(有吉)

 その翌年から有吉はコンスタントに代表に名を連ね、昨年5月のアジアカップ、10月のカナダ遠征でついに主力組に追いつく成長を見せた。今大会に入ってからも、大野とのコンビネーションでこれまで停滞していた右サイドを活性化すると、決勝トーナメントでいきなりのゴール。唯一、左右両サイドをこなす有吉が、この大舞台でブレイクの兆しを見せている。

 オランダが日本の攻撃を封じるために引くわけでもなく、トップに当ててのサイド攻撃に終始した上、DFラインも日本の連動の前に足すら出せなくなっていたため、日本はさほどプレッシャーを感じることなく、攻撃を組み立てることができた。

 CBの岩清水梓(日テレ・ベレーザ)は高い位置で最終ラインをキープし、自らハーフウェーラインを越えて運んでいく。起点を高く持つことで、攻撃陣は一気にスペースへ走り込むことができた。さらにワンタッチ、ツータッチを織り交ぜたコンビネーションプレーだけでなく、鮫島彩(INAC神戸)、有吉ら左右サイドバックも積極的に攻撃参加。

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