まだ化ける。なでしこがW杯を勝ち切るための「伸びしろ」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 マズイことばかりではない。スイス戦ではエースのバッハマンに一枚一枚DFが剥がされるという屈辱的な突破を許していたが、カメルーン戦では、ここぞというときには少なくとも3枚、多いときには4枚が同時に囲い込むという、同じビジョンを同じタイミングで描けるようにはなっていた。

 全体的に走力を上げて、終始、数的優位な状況を作る動きも功を奏していた。もちろん、対戦相手の実力差も踏まえればこれを即課題克服と結びつけるのは安易だが、同時に複数人が反応し、囲い込める守備が出始めれば、なでしこの調子が上がってきている証拠。すり合わさってきていることは確かだ。

 そしてもうひとつ気になるのがシュート数の差。前半立ち上がりに猛攻を見せたものの、日本のシュート数はわずかに4本と、寂しい。そのうち2本を得点につなげているのは、確実性から見れば高い数字かもしれないが、あまりにも少ない。乱発を促すわけではないが、シュートを打たねばゴールは決まらない。カメルーンが後半に放ったシュートは20本。打たれ過ぎだ。強引さはあるもののそのうちの何本かは精度のマズさに救われただけで、確実に仕留められたタイミングだった。

 時間帯、展開によって攻守のバランスを変えるのは当然のこと。そこに今、なでしこは複数のポジションチェンジを最低限のメンバー変更でこなす、高度な戦術が加わっている。これをこなすことができれば相手にとって脅威になることは間違いない。今は徹底的にポジション感を体に叩き込み、そのときどきのコンビネーションを積み上げていかなければならない。それも早急に。

 次なる相手は、各チームに大量失点を食らっている格下のエクアドルだ。これまでの佐々木監督の戦い方から見れば、控えの選手の引き上げを狙ってターンオーバーという道も思い浮かぶ。だが今チームに必要なのは"実戦"での積み上げに他ならない。1位通過になれば中6日空く。フィジカル的なターンオーバーは特に必要ない状況にある。今なお控え選手のメンタルと経験の引き上げにこだわるのか、いくつか可能性が生まれた脅威となるフォーメーションの完成度を上げる手を打つのか、指揮官の判断に注目したい。

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