まだ化ける。なでしこがW杯を勝ち切るための「伸びしろ」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 90分のうちには、自分たちのペースで運ぶことができない時間帯が必ずやってくる。そこをどう乗り切るかが課題だった。シンプルに跳ね返すのか、タッチラインを割るのか――初戦のスイス戦でもイメージは固めたはずだったが、実際には、第2戦のピッチ上で、そうした試みは少なかった。

「初戦よりもできた部分はあったけど、危ないシーンも多かった。(危ないところまで)持ってこさせない守備も必要」と振り返るは熊谷。

 試合終了後は勝利の喜びではなく、即刻最終ラインが集まってのピッチミーティングが行なわれていたことからも、守備陣の必死な調整を感じ取ることができる。

 互いのズレが生じる理由のひとつには現在取り組んでいるポジションチェンジがある。

 後半に入ったところで佐々木則夫監督はボランチの宮間を左サイドハーフへ、左サイドバックの宇津木瑠美(モンペリエ)をボランチに、左サイドハーフ鮫島を左サイドバックへ変更し、55分には右サイドハーフの川澄に代えて大野忍(INAC神戸)を、64分には阪口を下げて澤穂希(INAC神戸)を投入した。

 試合中に中盤、サイドバックを同時に大きく変更するには少なからずリスクが伴う。互いの間合い、カバーリングのタイミングを再度なじませる時間がどうしても必要だ。その間が最も危険な時間帯となる。カメルーンのようにスピードのあるチームに対してはなおのこと難しい。ズレればピンチになるが、ハマれば相手を翻弄できる。今はまだ体得していると言える状況にはないが、どこまで完成度を上げていけるかで、なでしこジャパンはまだまだ"化ける"可能性は十分にある。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る