イラク戦大勝だからこそ考えたい、ハリルJの問題点 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Fujita Masato

 攻撃を安定させるためには、攻撃のルートが右、左、真ん中と、3本確立されている必要がある。バラエティも豊かになる。攻撃の中だるみ防止に繋がる。ペースダウンしにくくなるのだ。

 日本代表は前半の途中から、「いける」というムードが災いしたのか、攻撃が雑になった。秩序が大きく低下した。「俺が俺が」の個人プレイが目立つようになった。本田、宇佐美がポジションを守らず、真ん中に入ったためだ。その結果、それまで目立ったサイド攻撃は決まらなくなった。

 前半33分、宇佐美の真ん中を抜ける動きで、岡崎慎司が3点目を決めたが、これは諸刃(もろは)の剣に値した。以降、日本の攻撃はさらに大味になっていく。

 それもまた、10番、香川と大きな関係がある。彼が真ん中で1トップ下に相応しいプレイ、存在感を発揮していたら、真ん中が上手く機能していたら、本田、宇佐美も真ん中に入る行為に二の足を踏んだはずだ。それが攻撃のバランスを崩す行為だと認識できたはずなのだ。

 もしそれを流動的なサッカーと言うのなら、彼らが真ん中に入ったとき、香川はサイドに流れる必要がある。かつて1トップ下を勤めていた頃の本田がそうしたように。だが、香川がこの試合を通して外に開いたことはほぼゼロ。サイドでのプレイが苦手だからとは、これまでの彼のプレイを見ていれば容易に推察できる。そして、その結果、日本のサイド攻撃は、立ち上がりのように円滑にいかなくなった。

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