1年前はJ通算14試合2得点。武藤嘉紀、激動の365日 (2ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi  photo by AFLO

 ほぼベストメンバーのサッカー王国に対し、若手主体の先発メンバーで臨んだ日本が0-4で大敗した、シンガポールでのゲームである。

 試合の数日後、武藤から聞いた言葉が強く耳に残っている。

「あんな選手になれる確率は99パーセントないってことが、よく分かりました」

 後半7分からピッチに立った武藤に強い衝撃を与えたのは、誕生日が約5カ月しか違わないブラジルの若きエース、ネイマールだった。

「でも、100パーセント無理だとは思ってないです。わずかでも光が見えるなら、そこに手を伸ばしてみたい。これまでのサッカー人生を振り返ってみても、わずかな可能性にかけて頑張って、最大限の努力をした結果、プロになれて、日本代表にもなれた。だから、『1パーセントあるだけでもよし』と思って、その1パーセントにサッカー人生をかけてみたいと思っています」

 でもね、と言って武藤は微笑んだ。

「いきなりネイマールを目指すなんて、僕は絶対に言わないですよ。だって、一気にうまくなるわけは絶対にないし、それは自分が一番よく分かっているから。ユースのころもアンダーの代表に選ばれたことがなくて、宇佐美(貴史)や(柴崎)岳がうらやましかったけど、自分に力がないんだから仕方ないと思って、本当に小さな努力から始めていって、少しずつ力をつけていった。自分には地道にコツコツやるのが合っているって、分かっていたから」

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