【なでしこW杯】骨折退場の安藤梢が残した「勝ち点3以上のもの」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ボランチはやはり3枚の起用となった。阪口のしなやかさと、澤のメリハリの効いたプレイで、前半の安定感はさすがのゴールデンコンビ。後半12分に澤は退いたが、本人も事前に了承済みだったこともあり、存分に存在感を発揮しての交代となった。

 代わって入ったのがワールドカップ初出場の川村優理(ベガルタ仙台)。緊張するのはもちろん、スイスが同点弾を狙ってギアを上げてきている最中に、そのど真ん中に放り込まれて、すぐに馴染むはずもない。しばらく続いた阪口の気配を常に意識しながらのポジショニングは、すべて中途半端になってしまった。ところがその数分後、川村は思い切ったスライディングで相手の進行を阻止しようとした。

「迷っててもしょうがない。思いっきりやるしかないと思った」

 川村は阪口のカバーを信じて自らができるプレイをぶつけた。結果、それが功を奏した形となる。昨年からセンターバックとしての能力を開花させ始めていた川村だったが、直前合宿から本格的に求められたのは、本来のポジションであるボランチだった。

 長丁場となる舞台では、ボランチのペアリングは複数必要だ。仮に澤、阪口、川村で組む場合、この試合のような交代は相手にも大きな影響を与える。ただし、自分たちの切り替えが何よりも重要だ。ボランチの迷いはピッチ全体に波及してしまうだけに、川村がいかに短時間で流れを掴むことができるかが今後カギとなっていきそうだ。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る