諸刃の剣!? ハリルホジッチ監督の3つの不安材料 (4ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by Reuters/AFLO

 これはフランス人監督にもよくある話だが、フランス国内で大きな失敗を犯したことにより、本人の希望とは裏腹に国内での再チャレンジの機会はその後訪れることはなかった。そういう意味で、ヨーロッパの最前線を長く離れた彼に最先端の戦術を期待するのは難しい部分がある。

 また、彼のようなタイプが本音と建て前で成り立っている日本人社会にすんなり馴染めるかどうかも不安要素と言えるだろう。かつて代表監督を務めたフィリップ・トルシエ(98年~02年)のようなエキセントリックな性格ではないが、思ったことを包み隠さず話すという点では共通している部分もあるだけに、協会首脳陣との関係も注視する必要がありそうだ。

 いずれにしても、何か新しいことが始まる前は期待と不安が入り混じるものだ。就任会見から盛んに「少し時間がほしい」と繰り返しているように、我々も長い目で彼の仕事を見つめていく必要があるだろう。少なくとも、彼にはネガティブな指導経験だけでなく、ポジティブな実績も多いことは間違いないし、何よりも歴代の日本代表監督に見られなかったような“やる気”を、さっそく言葉と態度で示している。

 とりわけ今回のメンバー発表会見における言動からは、日本代表で結果を残し、再び指導者としてのキャリアアップを狙っていると推測できそうな強い野心も窺えた。そういう点で、抜本的改革を必要としている日本代表にとってはうってつけの監督になる可能性は十分にあるといえる。吉と出るか凶と出るか--。いずれにしても、賽(さい)は投げられた。

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