ポルトガルに完勝。サブ組が示した「なでしこ本来の姿」 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 90分の中には、簡単にゴール前まで運ばれてピンチを迎えるシーンも度々あったし、イージーなパスミスも多かった。洗練されたプレイではなかったかもしれないが、その時々でピンチをお互いにカバーした。それがこの“チーム”で決めた決まり事だったからだ。

 1点目はセットプレイから泥臭く、こぼれ球をモノにした。2点目は若手・横山が個の力でこじ開け、3点目は川村からアイコンタクトでDF裏に走り込んだ菅澤がトラップ後、滑り込みながらゴールを奪った。すべてシンプルながら狙いを定めて、繰り返すことで生まれたゴールだった。

「このメンバーだから今日の試合でイニシアティブを取れたんですよ」と語るのは佐々木監督。相手が格下だからではなく、このメンバーだからこのプレイができたのだという。

 ピッチに立つのは11人だが、サッカーは11人だけで行なうものではない。もちろん、デンマークとポルトガルには実力差があるため、スコアやポゼッションのみを取り上げて比較することはできない。

 さらに自分たちの選考もかかっている試合で、サブ組が自身の可能性を犠牲にして、主力組のために戦ったとも言わないけれど、“今の自分たちは何ができるのか”を話し合った彼女たちが“チーム”として戦うことを選択したということだ。

 その向こう側に、いつも真っ向から世界とぶつかっていく主力組への想いがあることは間違いない。このポルトガル戦を他の選手たちはどう捉えるのだろうか。主力組に向けて佐々木監督もメッセージを送った。

「デンマーク戦はチームで戦っているように見えて、6割は個の判断だった。その反省を踏まえ、今日の試合を客観的に見て気付くこともあるでしょうし、彼女たち(主力組)なら(修正が)できると思います」

 その答えはきっと、中二日で迎えるフランス戦のピッチにあるはずだ。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る