日本代表監督選び。候補者たちに「断られる」理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sports

<私は日本代表監督のオファーがあったんだが、あなたのところはどうなのかね?>というわけである。現在、乱れ飛んでいる名前も本当のことかどうかは定かではない。あるいは人物照会レベルで連絡をしていたとしても、それはオファーとは言えないだろう。彼らはそこで「断った」と発信することで失うものはなく(欧州での監督復帰が目的にあるため)、監督としての箔(はく)が付くのだ。

 監督交渉においては、交渉する側と監督(もしくはエージェント)がお互いの価値を探り合い、そのやりとりの中でサインまでたどり着く。嘘が真実に、真実が嘘になる。そうした世界である。

 サッカーファンはドラガン・ストイコビッチを代表監督として待望しているらしいが、国内でそれを煽るような報道は、交渉人にとってはいい隠れ蓑になるだろう。だから協会は「ありません」と、公には否定しない。交渉サイドにとっては、本当にサインしたい人間との接触を知られたくはないのである。なぜなら、その瞬間に当該人物の周辺は騒がしくなってマーケットが動き出し、他チームとの交渉も活発になってしまうからだ。

 ザッケローニ監督を探し当てた交渉では、原博実技術委員長(当時)と霜田正浩技術委員(当時)の二人がすべて取り仕切った。協会会長や幹部、さらには家族でさえも交渉の内容を知り得ていない。そこまで秘匿性がない限り、ザッケローニのレベルの監督(セリエAのACミラン、ユベントス、インテルという強豪を指揮、スクデットも獲得)を連れて来ることはできなかった。

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