日本代表監督選び。候補者たちに「断られる」理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sports

 一方、日本が用意できるのは年間2~3億円。世界のトップ監督は3億円以上が相場で、ジョゼップ・グアルディオラは20億円以上を稼ぐ。代表監督選考のたび、未だに初恋相手のように名前が出るアーセン・ベンゲルも、年俸10億円と、交渉成立はあり得ない。

 こうした事情を、まずは踏まえるべきだろう。

 そもそも、「断られた」という報道も、先方が話しているだけで、日本サッカー協会から公式のアナウンスはない。

 南アフリカW杯後にザッケローニとの契約サインに至るまで、日本のマスコミは一時、テレビもスポーツ紙も、「ビクトル・フェルナンデス(サラゴサ、セルタなどを指揮し、攻撃サッカーを標榜するスペイン人監督)で決まり!」と騒いでいた。当時、V・フェルナンデス側からも代理人が出てくるなどして、好意的なコメントが出されていた。しかし実のところ、協会はなんのコンタクトもしていない。候補リストにすら入っていなかったのだ。

 当時、筆者はV・フェルナンデスのヘッドコーチに手を回して確認した。「なんの話も来ていない」との返答だった(欧州や南米の監督は、ヘッドコーチ、フィジカルコーチ、GKコーチ、戦略担当などがセットで動くことが多い)。

 監督交渉の世界は、虚々実々の駆け引きである。

 なぜV・フェルナンデスの名前があがったのか。V・フェルナンデスは当時フリーで、「私は引く手あまたの存在で、いつでも監督のオファーを受けるよ」と宣伝する必要があった。早い話が、就職活動中。その意味で、日本のメディアからのコンタクトはこれ以上ないきっかけだったのである。

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