ヨルダンに完勝も、違和感の残る「総力戦」という言葉 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki  松岡健三郎●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo

 ただし、この勝利によって大会連覇への期待が大きく高まったかと言えば、話はそれほど単純ではないと思う。

 この大会、日本はグループリーグ3試合すべてを同じ先発メンバー11名で戦っている。さらに言えば、交代出場の3名のうち、試合展開に関係なく2名(清武弘嗣、武藤嘉紀)までは同じだ。つまり、実質的には13名(先発11名+交代2名)の固定メンバーでチームが成り立っている状況にある。

 優勝のためには20日間で6試合を戦わなければならない"異常な大会"を、本気で勝ち上がろうと思っているなら、ここまでの選手起用はとても賢明とは言い難(がた)い。

 昨年のワールドカップを見ても、全7試合で登録23名全員を出場させた3位のオランダを筆頭に、チームによって程度の差こそあれ、選手をローテーションさせて起用していくことが勝ち上がりの重要な要素となっていた。優勝したドイツにしても、グループリーグでは毎試合のように先発メンバーを入れ替えている。

 もちろん、固定メンバーで戦えば、安定した戦いが計算できるというメリットはあるだろう。しかし、それを続ければ相手に研究されやすくなり、いずれ自らがガス欠を起こす。だからこそ、うまく選手を"回していくこと"が必要なのだ。

 本来であれば、グループリーグでは選手を回して疲労を分散させつつ、その大会でのコンディションや調子を含めてベストメンバーを探り、一発勝負の決勝トーナメントに入っていくのが理想の流れである。

 今大会の日本は強い。優勝候補の前評判にふさわしい戦いを見せている。だが、そんな見た目のよさとは裏腹に、日本は限られた選手に負担を集中させている。これから先、対戦相手のレベルが上がっていく中で、日本はパフォーマンスを落とす可能性が高い。

 しかも、次の準々決勝・UAE戦までは中2日。日本は今大会最短の試合間隔で次戦を迎えなければならないうえ、対するUAEは中3日と、1日分のアドバンテージを持っているのだ。

 メンバーが固定されていることについて長谷部は、「それは監督が決めること」だとしながらも、「交代で出場した武藤(嘉紀)がアシストで結果を残しているし、チーム総力戦で戦っているという感覚はある」と話す。吉田もまた同様に、「(負傷者や退場者を頻繁に出した)前回のアジアカップの教訓もあるし、チームの総力戦だと思っているので、みんなで戦い抜きたい」と、総力戦という言葉を強調する。

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