豊田陽平が驚いた「本田圭佑、内田篤人の変貌」 (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロスポーツ●写真

<たとえ失敗してもいいから、一度は自分も海外という環境に飛び込んでみたい>

 真剣にそう考えるようになった。

「オカ(岡崎慎司)も昔よりうまくなっていますからね。ドイツでプレイしていることで自信を付けているんだな、と思いました。体つきは、昔とはまるで変わっていますね。肩周りからなにから、がっちりむっちりしていて。それでいて、オカはとにかく俊敏に動いてパスコースを作れるし、活動量は半端ない。点を取るためのポジションをいつも取ろうとしているし、できなくても相手を攪乱している。オカはベンチで一緒に北京五輪の戦いを見守った選手です。ここまで成長しているとは……率直に言って、海外でプレイすることに心を動かされましたね。まあ、プロ選手なのでオファーがなければそれも難しいんですが」

 彼は心中を包み隠さずに打ち明けた。一人のアスリートとして、それはまっとうな欲求なのだろう。

 星稜高校から名古屋グランパスに入団した頃、彼の月給20万円程度だった。年末に「数千万円の年俸で契約を更新」という記事を見ると、“いつかこういう選手になってやる”と心に誓った。技術の高い選手と自分を比較し、欠落感を覚えたこともある。しかし自分が下手でも生き残る道を探した。そしてJ2から這い上がり、J1で優勝争いし、得点を量産して日本代表に選ばれるようにもなった。

 鳥栖というクラブで夢中に過ごしているうちに、思った以上に遠くまで歩みを進めて来たのだろう。

「これから進むべき道は、じっくり決めようと思います」

 彼はそれだけ言った。

 探求心旺盛な豊田は、こつこつと経験値を貯めてきた。手強い相手と戦う、そうした環境が自分を鍛錬することを心得ている。まずは鳥栖の選手として1シーズン戦った体を休める必要がある。自分がカラッポになるほど戦い抜くことで、今の豊田は作り上げられてきたのだ。そしてその後は――。

 戦闘者はその闘争にふさわしい舞台に立つことになる。

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