豊田陽平が語る「2014年、鳥栖に何があったのか」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by 7044 AFLO

「3シーズン連続15得点以上」という誉れある記録も達成した。過去の記録保持者は日本人では三浦知良、武田修宏、中山雅史の3人のみ。12年ぶりの更新で4人目になった。特別に賞が与えられるわけではないが、コンスタントに得点をとり続けてきた証拠だろう。過去3シーズンの合計得点数は54得点、こちらは佐藤寿人、大久保嘉人らを抑えてリーグ最多である。

「3シーズン連続15得点以上の記録を達成した方々は、そうそうたるメンバーばかりですね。全国的知名度を考えると、“自分がここに名を連ねていいのかな?”という違和感さえあります。僕はずっと注目される場所を歩いてきたわけではない。じっくりとプレイを積み重ねてきたら、こういうことになった。喩(たと)えるなら、足下だけ見ながら階段を上ってきて、ふと見上げたら知らない景色が、みたいな不思議な感じで。今は肩を並べるにふさわしい選手にならないとな、と責任を感じています」

 豊田が愚直に歩くことで、チームの成績も付いてきた。もっとも、彼自身はそうは考えていない。

「根底の部分で“自分は器用な選手じゃない”と弁(わきま)えているんですよ」と豊田は心情を吐露する。

「『サガン鳥栖は豊田にかかっている』と言ってもらえるのは気持ちが高まりますけど、僕自身は、『豊田はチームメイト全員にかかっている』と思っています。僕を生かすためには、必ず誰かが犠牲になっているんですよ。だから自分も、守備の部分での仕事を怠ることは絶対にできない。その上で、FWとして点を取るという仕事をしているだけです。ゴールというのは仲間に取らせてもらっているんですよ。僕はみんなを信じて動き出すだけです」

 綺麗すぎる言葉に聞こえるかもしれないが、彼には驕(おご)ったところがない。むしろ活躍すればするほど、フォア・ザ・チームの姿勢を強める。

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