【なでしこ】近賀ゆかり「私、アーセナルでは1年生です!」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

―― ここ数年、日本ではとことん頭を使うサッカーやっていました。それはすごくボランチとして役に立ったのでは?

近賀 それは思います!守備のところでバランスを取ったりとか。海外のチームだと1-1の勝負が基本だから、カバーもいない。もうちょっとライン上げてほしいとか、2枚マークがいるから1枚下がってほしいとか。伝えるのは難しかったですけど、それが上手く伝わるとやってくれる。カバーに入るタイミングとか、ポイントはボランチも同じですから。

―― でも、近賀選手はカバーに入るけど、近賀選手が出るときはきっとカバーに入ってくれなかったりするんですよね?

近賀 そう!それが難しかった。自分がカバーに入ると、自分の本来のスペースが空いちゃうから、「ステイしろ」って何回も言われました。自分のスペースでやられたら、自分の責任だし、そういう迷いはありました。

 CBをやったとき、インターセプトを狙っていたところ一発で抜かれて失点したんです。ハーフウェーライン付近だったんですけど、そのパターンが2試合くらいあって。日本だったら、CBが一枚はがされても、SBとかがカバーに入るから、センターサークルから独走されてゴールを奪われるなんて考えられない(笑)。でも、アーセナルでは実際にやられるから、ああカバーがないってこういうことかっていうのを思い知らされました。それでチームが負けちゃったので、そのバランスは難しかった。

―― ボランチは攻守に関わるから、伝えることってすごく大変だったのでは?

近賀 めちゃくちゃ大変でした。とっさに言葉が出てこないんですよね。だからアヤ(宮間)とか澤(穂希)さんとか、ナガ(大儀見優季)とか、海外で周りを使うってすごいなって思いました。

―― チャレンジしたいと臨んだ海外移籍は、文字通りチャレンジの連続だったんですね。

近賀 本当、行ってよかったです。自分も考えなかったことを要求されるから。試合に出られないもどかしさとか、練習の少なさに戸惑うこともありましたけど。

―― ケガ以外で、もどかしい気持ちになるのは久しぶりじゃないですか?日本だと"なでしこジャパンSBの近賀"のイメージが定着しているけれど、今回はなんだか一年生みたいに......。

近賀 そうそうそう!そういう感じ。そうだ、一年生だ、私(笑)。みんなも本当のポジションじゃないってことを知っててくれたし、たまにSBに入ると「やっぱりSBの選手なんだね」って言われましたもん(笑)

―― やりたかった経験を十二分にした感じですね。齢30歳で――。

近賀 一年生(笑かできる経験じゃないです。チャレンジすることを決めてよかったと本当に思える1年でした。

 決して思い描いていた通りのチャレンジだった訳ではない。それでも、彼女はこれまでに積み重ねてきた経験を生かし、新たなポジションに触れることで自身の強みを再確認した。

 そんな近賀が改めて感じたなでしこジャパンの強みと、ワールドカップ連覇への鍵とは――。

(なでしこ編へつづく)

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