鈴木大輔が回顧。「今年一番悔しかったブラジル戦」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sports

<最高のセンターバックになるには、やられる経験も欠かせない>

 鈴木はその居直りを道標にしている。

「相手の動きやパターンを読むというのは大事だと知っているんですが、今は“隙が見えたら潰そう”と心に決めています。(柏で2年目の)今シーズンはコンスタントに90分間でられるようになりましたね。だから、自信を持ってプレイできるようになりました。昨シーズンは周りに気を遣っているところもありましたが、今は自覚を持ってラインをコントロールできるようにもなっていますよ」

 大胆な戦いを挑むことで、見えてくる守備者としての間合いがある。

「さらにレベルアップするには? 難しいですね。例えばゴール数はわかりやすい自分のアピールにはなるかもしれません。セットプレイでの“ゴールに入れるヘディング”の技術を上げるとか。そうやって代表に定着することで、また成長できる機会が巡ってくるかもしれない。センターバックである自分にとっては、相手のボールを奪うところが一番。相手との単純なぶつかり合いだったり、そこは追い求めたいし、絶対に負けたくはないですね」

 鈴木はどこか、カルレス・プジョルの面影と重なる。FCバルセロナ、スペイン代表のディフェンダーとして敵に立ちはだかったプジョルだが、育成環境には恵まれていない。14歳になるまでは運動靴でプレイしていた。学校の仲間で作ったチームで地域大会に優勝し、どうにか地域選抜に選ばれたが、カタルーニャ地方の片田舎の選抜チームでさえ、ユニフォームも渡されなかった。

「目にモノ見せてくれる!」。彼はその反骨心を力に換えた。17歳でバルサに入団したときも自他共に認めるチーム一下手な選手だったが、目の前の敵に食らいつき、活路を開いていった。プロデビュー後も劣勢に立たされることはあったが、むしろそのやりとりの中で気力を充実させ、戦いの中から成長を遂げた。奮励努力。専(もっぱ)らそれのみで一流ディフェンダーとなった。

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