鈴木大輔が回顧。「今年一番悔しかったブラジル戦」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sports

 鈴木は決まり悪そうな苦笑を浮かべた。“センターバックとして、自分のミスで相手を好きなようにいかせない”という守備者の気骨だ。ミスの重大さを、彼は胸に刻みつけている。一つ一つのプレイを糧にするしかないのだろう。

 その学習能力の高さは、イノベーションと表現しても大げさではない。オペレーションの成功と失敗の連続が、才能を革新させる。簡単に聞こえるだろうが、失敗から学べている選手は多くはない。

 例えばロンドン五輪、鈴木はモロッコのFWノルディン・アムラバト(現マラガ/スペイン)とマッチアップしている。体をぶつけてもビクともせず、「やばい」と焦った。食いつきすぎると別格のスピードで裏をとられそうになる。アムラバトとフェンロ(オランダ)でチームメイトだった吉田の忠告を受け、間合いを一新。即座に対応を変えることで、何とかしのげた。試合中の発見が楽しかった。

「FWから見ても、大輔はここ数年でレベルアップしていると思いますよ」

 そう説明したのは、同じ柏に所属し、日本代表としても共に戦っている工藤壮人だ。

「アジア大会(2010年)や五輪代表で一緒にやっていた頃は、それほどインパクトのある選手ではなかったんです。でも柏で試合を重ねる中、どこで(チャージに)行くべきか、行かないべきか、とかの見極めが格段に良くなった。元々、勘の良さというか鋭さというかはあって。例えば50対50のボールに対して、敵よりも少しだけ先に早く触って体ごと潰せる。それもノーファウルで。それはチームメイトとして頼もしいですよ」

 鈴木は今も自分に技術があるとは思っていないが、それによってへこたれてもいない。失点したら、責任を感じる。ただ、ディフェンダーはやられた経験を二度と繰り返さない、という部分を積み重ねていくしかない部分もある。やられるパターンを研究し、対処法を作り出すしかないのだ。

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