鈴木大輔、代表を語る。「本田圭佑に見たメンタルの重要性」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 わかりやすいセールスポイントとしては、"敵アタッカーを確実に潰す"、堂々たる体躯を生かしたハードなディフェンスがある。技術的にはヘディングが強く、タックルは深く迷いがなく、アジリティーは長所ではないが、ターンは弱点ではない。また、3バックにも4バックにも対応する適応力がある。

 しかし鈴木の異能は、90分間にわたって維持できる集中力と責任感にあるだろう。試合を通じてインテンシティが落ちないことで、後方から前方へと熱気を伝えられる。鋭気に満ちた表情や仲間への叱咤は、チームに前進する力を与える。それは守備であって、攻撃である側面もある。

「大輔はミスしてもへこたれないのがいい」

 そう語ったのは、柏の主将を務める大谷秀和だ。

「ディフェンダーは失点を防ぐのが仕事ですけど、試合の中でミスが失点になることはあるんです。そこでくよくよしてばかりいると、弱気になってしまい、また同じような失敗をする。大輔は少々のことは気にしない。その"明るさ"はセンターバックとして成長する要素だと思います。改善すべき点は、例えばサポートの距離だったり、プレスのかからないボールの運び方だったり、いくつもありますよ。でも、大輔はポジティブな思考を持っているから成長できるはずです」

 普段の鈴木は"後先考えずに行動する"というタイプではない。話しぶりは穏やかだし、一つ一つの言葉をとても慎重に使う。温厚篤実。徒党を組むことはなく、誰とでもまんべんなく付き合える男だろう。

 しかし、ピッチに立ったときの鈴木はぎりぎりの感覚を求める。守る、という行動は、基本的に受け身にならざるを得ず、精神的摩耗が激しいのだが、鈴木は敵との対峙を心ゆくまで楽しむ。

「おまえをぶっつぶしてやる」という裂帛(れっぱく)の気合いで、間合いを研ぎ澄ませる。

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