2014.12.17

アギーレ八百長問題はスペインでどう報じられているか

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi
  • photo by Yamazoe Toshio

 今回の件とは全く関係はないが、バルセロナのアルゼンチン代表FWメッシも脱税疑惑で裁判所に出頭を命じられている。もちろん、メッシが裁判所に出頭したことはニュースであり、その日の報道では大きく取り上げられている。だが、判決が下されていない現時点では、どのスペインメディアもメッシを容疑者とした報道はなく、サッカー選手としてのパフォーマンスを伝えている。

 最近のスペインサッカー界では、元バルセロナ会長ホセ・ルイス・ニュエスが脱税と贈賄で2年2ヵ月の懲役、元セビージャ会長ホセ・マリア・デル・ニードが収賄で懲役7年の実刑を受けた。後者に関しては、有罪が確定した後も同氏のスペインサッカーへの貢献からの恩赦を求める署名集めなどについての報道があったが、例えばレアル・マドリードとバルセロナで争われるクラシコのようなライバル関係に結びつける報道や、感情的になるような報道はなく、起きたことを淡々と伝えるものだった。

 もちろん、スペインメディアに疑惑を追及するような報道がないわけではない。ネイマールの移籍問題で当時のバルセロナ会長サンドロ・ロセイが辞任したケースがそうだ。ソシオからの告訴()を裁判所が受理したことがひとつの引き金となり同氏は会長職を辞任した。だが告訴が受理される前に、公式発表の移籍に関わる金額と裁判所に提出されていた書類の額が違うことが発覚したのは、メディアが自らの手でスクープしたものだった。

(※)ネイマールのバルセロナ移籍に際して、移籍金の額や流れに不正行為があったとして、サポーター組織の会員がクラブを訴えた

 アギーレ日本代表監督が渦中の人であることは間違いない。今後の代表の活動を考えれば、サッカー協会が早々に新たな決断をしたり、声明を発表する必要もあるだろう。ただ、そのポストやインパクトの大きさだけでメディアが大騒ぎするのであれば、大きな問題だろう。

「疑わしきは罰せず」が刑事裁判の原則と言われているが、「疑わしきは罰せよ」と言わんばかりの日本のいくつかの報道と、今回の事件が「何人かのサッカー人生に大きな影響を与える可能性がある」と伝えるスペインの報道を比較すると、温度差の違いに少なからず違和感を覚えてしまうのだ。