浦和レッズレディース優勝!降格争いからの躍進を支えたもの (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そしてその守備を支えるのが中盤、前線の選手のプレスだ。とにかく走る。攻撃側の選手たちがプレスをかけ続けることで、守備陣はボールの出どころを絞ることができる。失点のリスクを大きく回避することができるのである。頭でわかっていても、なかなかできないのがこの全員参加のプレスだ。攻撃につなげるためのプレスを惜しまない攻撃陣、守備で助けてもらっている分、リスクを背負ってでもラインを上げ、ボールを的確に供給する守備陣。互いの負担を五分五分でとらえているバランスは他にはない強みだ。ボールを奪ってからの展開にも、意識の統一がある。

「サイドチェンジをして相手が薄くなったところを突くこと。本当に何度も繰り返してやってきた。そのタイミングやスイッチを入れるところとか、共通意識が深まってきたって試合でも感じます」とは大滝。トリッキーな選手がいても、ボールを無駄持ちしないのはその共通意識があるからだ。

 前半の元気なうちに得点をマークできれば、勝率はグンとあがる。全員が攻守に絡むのだから、もちろん運動量がモノを言う。今オフはかなり走り込んだ浦和。その甲斐あって、チームの立て直しに成功し、そのひとつひとつが選手たちの自信につながっている。

 課題は、前半の勢いあるサッカーをいかにして後半につなげるか。同じトップスピードでは今シーズンのように後半に息切れをしてしまう。この波を解消すれば、選手たちの描くサッカーで再び頂点に立つことも現実となるはずだ。
 
 負けてチャンピオン――。確かに、キレイな優勝ゲームではなかったかもしれない。しかし、昨シーズンは降格争いをして崖っぷちに立たされたチームが、基本に立ち返り、ひとつひとつの技術、戦術、努力を重ねてここまで這い上がってきた。どんな形であっても、ここまで戦い上げたこと、その上逃げ切る強さをも身に着けた。

「ほかのチームが経験していないようなことを乗り越えることで成長できた」(大滝)、「まだまだ私たちは発展途上。個のレベルが上がれば、もっと強くて魅力あるサッカーが表現できる」(後藤)

 苦さを知った若いチームが頂点に立ったことで、今シーズンは、なでしこリーグの勢力図を大きく変える“意義ある1年”になっただろう。

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